その週末は西日本を中心に記録的な大雨の被害が広がり、私の実家も一時避難指示対象地域に入ってしまうという週末でしたが、心配すること以外にできることはないので、予定どおり伊豆七島は式根島にスキューバダイビングに行ってきました。
金曜深夜に竹芝桟橋を出港する頃には東京の雨は上がり、大島を通り過ぎる頃には「さるびあ丸」の甲板から水平線上の穏やかな朝焼けを眺め、午前8時、式根島の野伏港に入港した時には真夏の日差しがまぶしかったです。
ダイビングはものすごく久しぶりで、スキルの再確認も必要だし、そもそも年食って体型も体調も変わっているので以前を同じ事ができるのかどうかも心配だしということで、午後からゆっくり、ビーチエントリーのやさしいダイビングを2本の予定。なので、午前中は原付バイクを借りて島を一周りしてみました。
リアス式海岸に囲まれ、ところどころの入江ではエメラルド色の海が涼しげです。
聞けば、先史時代から平安時代の遺物も出土しているそうで、この島に古くから人がいたことが分かります。江戸時代にも八丈島に渡る時の風待ちのために船を入江に入れたり、隣の新島の人々が漁に来たりしていたようですが、改めて定住者が入植したのは明治21年(1888年)のこと。昭和12年(1937年)の開島50周年の碑と、昭和62年(1987年)の開島100周年の碑が建てられておりました。
4世帯8人が入植した当初は真水の確保に苦労し、3年がかりで掘った「まいまいずの井戸」。現在は新島から海底に敷設したパイプを通じて真水が送られてきているそうです。
現在の島の産業は漁業と観光業。
小型漁船で近海の魚を捕っているそうで、いろんな種類の魚が揚がるそうですが、季節になると5kgくらいの脂ののったマグロがうまいという話です。また、タイの養殖も行われている様子でした。しかし、巻き網漁船による大規模漁業の影響で、この島の家族経営的な漁業は厳しいとの話も聞きました。先行きが明るくないので、跡継ぎがいないし、継がせたくもない。いずこも同じでよく聞く話です。
観光業の方は、釣り客がメイン。海水浴客、私のようなダイビング目的の客もやってきます。島内に何か所かある海辺の露天温泉も楽しめます。
しかしこちらも厳しいようで、民宿の数は往時の半分くらいになってしまったとのことでした。私が式根島に行ったのは7月初頭のハイシーズンに入る少し前だったので若干割り引いてみないといけないし、また日差しと潮風の強いところで屋外のものが早々に色あせてしまうということもあるんだろうとは思いますが、それにしてもこんな風なギリギリな感じの宿や店が多く、明らかに廃業してしまっているところも目に付きます。
観光のハイシーズンは夏の約2か月間だけ、台風シーズンになれば客足は落ちるし、冬は暇だしということで、島の人は夏は民宿など観光客相手の仕事をし、それ以外の季節は漁業を手伝ったり、隠れた産業である公共事業に従事したりしているようですが、それもそんなに実入りがよいわけでもなく、先細りを思わせる話でした。
ということで、いずれにしてもあんまり景気のいい話ではないので、若い人が定着せず高齢化が進み、働き手が高齢化するからまた民宿が閉じるという悪循環。少子高齢化の昨今、日本全国どこでも似たようは話は聞きますが、都内からのアクセスはそんなに悪くないところ(竹芝桟橋から大型船で9時間、高速船で3時間。調布飛行場から飛行機で新島まで40分、新島まら船で20分)にある美しい海と島というアドバンテージを持っているのに、それでも避けられないこの現実。開島100周年、昭和62年には700人を超えていた島の人口は、今は550人くらいだといいます。
行政もただ傍観しているわけではなく、東京都は人口当たりで見れば破格の予算を離島に割いていますし、平成31年3月末までの期間限定ではありますが伊豆七島の加盟店で有効な電子クーポン「しまぽ」を発行したりもしてます。
それでこの「しまぽ」、観光客が7000円で購入すると都が3000円の補助を付けて1万円分のクーポンとして使えるという仕組みなのですが、認知度はあまり高くないようで、しかもお店側にしてみると運営側(JTBだそうですが)に手数料をピンハネされるのでちょっともにょもにょしてました。私も式根島に行くと決めてから「しまぽ」の存在を知ったわけで、「しまぽ」があるから伊豆七島に行こうと考える人がどれくらいいるのかなと考えると、若干疑問な気もします。まあ、お得感はあるし、離島振興をがんばっているという広報効果があるとして、それで良しとするんでしょうかね。
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とはいえ、エメラルド色の海、亜熱帯のハイキングコース、近隣にはサーフィンに好適な島もあり、しかも都内から近い。金曜の夜に出て、日曜の夕方には戻ってこれる、都内の勤め人の週末エクスカーションにはもってこいの場所です。ご興味ある方はぜひ。おすすめです。